「新入社員研修」と聞けば、退屈でつまらない、できれば受けたくないと考えている新入社員の方が多いようです。
社会人としての基礎能力をつけてもらうには新入社員研修はとても大切ですが、大切なのは本人の意欲です。そもそも、意欲がなければどれだけお金と時間をかけても期待した効果は得られないでしょう。新入社員のやる気に火を点けるには、主体的に楽しんで取り組めるユニークな研修を提案したいところ。そこで今回は、「実際に企業が実施している社員研修」と「効果性についての科学的な根拠」をご紹介いたします。
アウトドア研修
自然に身を置くことで心にゆとりができる
都心で仕事をすることが当たり前になっている人からすると、自然の中で頭を空っぽにして五感を感じる機会は貴重なものではないでしょうか。実際、都会で日々聞こえてくる交通機関や街頭などの騒音は、私たちの健康にとって、大気汚染に次ぐ重大な公害問題だと世界保健機関(WHO)は指摘しています。そして、喧騒な環境は、ストレス、睡眠障害、学習障害、聴覚障害、そして、心疾患など多岐にわたる健康への悪影響を与える原因となることが知られ始めています。
日本の宮崎良文教授は、森林浴をすることで都会人の免疫機能が向上し、ストレスが低下することや、抗がん細胞が活性化することを発見しました。自然環境に身を置き、改めて仕事や人生を見つめ直す機会をもうけることは、社員の方々に大きなメリットを提供することでしょう。研修としてだけではなく、いつもの会議をいつもの場所でやっても、いつもの答えになってしまう。そんなときは、自然に近い環境で会議をやってみてはいかがでしょうか。
サバイバル研修
仲間と協力することで自ずと主体性が生まれる
今、大手企業を始めとして、サバイバル研修を取り入れる企業が増えてきています。例えば、インスタントラーメンでお馴染みの日清食品では、新入社員から若手社員を対象に無人島で3日間のサバイバル研修を行っています。これからの会社を担っていく彼らの心身を鍛えることを目的とし、10年以上前から行っているそうです。
様々な効果がありますが、参考になる研究の一つに、「アクティブラーニング(能動的学習)」というものがあります。アクティブラーニングとは、学習者である生徒が受動的となってしまう授業を行うのではなく、能動的に学ぶことができるような授業を行う学習方法です。ハーバード大学、スタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)などで、効果が実証されたことから、学校教育だけでなく、企業研修にも当たり前のように取り入れられるようになりました。具体的には、人は以下のパーセンテージで物事を記憶、定着させるそうです。
講義を受ける-5%
資料や書籍を読む-10%
視聴覚(ビデオや音声等による学習)-20%
実演を見る-30%
他者と議論する-50%
実践による経験、練習-75%
他者に学んだことを教える-90%
つまり、能動的であるほど、学んだことの定着化を図ることができるということです。また、記憶の定着率を高めたければ、他者の関わりを増やし、且つ主体性・能動性を発揮できる場に身を置くことが求められます。新入社員には、ぜひ自分で考え、周りを巻き込める人材になってほしいと願う人事の方は、ぜひアウトドア研修をご検討ください。
暗闇で行う研修
本当のコミュニケーションとは何かを知ることができる
トヨタが導入したことで一躍話題になった暗闇研修。どのような研修かというと、「何も見えない完全な暗闇の中に身を置く“暗闇体験”を提供するプログラム」で、参加者は完全に光を遮断した真っ暗な空間へ入り、暗闇のエキスパートである視覚障がい者の案内のもと、「光のない世界」を探検するというものです。
これまで全世界39カ国、130都市以上で開催され、800万人を超える人々が体験したこのイベントは、「暗闇のソーシャルエンターテインメント」として世界的に知られています。
「百聞は一見に如かず」という諺があるように、わたしたちは五感による知覚の割合として約83%の情報を「視覚情報」から得ているそうです。情報をインプットする上で大切な視覚をシャットアウトしたとき、相手の肩書きや身なりの奥に隠された、本当の声に耳を澄ませることになります。
目が見えていることが、逆に物事を見えなくしてしまっているということを思い出させてくれる。そんなユニークな暗闇研修を導入し、会社に新たな視点を取り入れてみてはいかがでしょうか。
お遍路研修
支えられて生きていることを心から実感する
「お遍路研修」とは、50kmの歩き遍路という高い目標を設定し、精神力と忍耐力を強化を目指す社員研修です。新入社員同士のコミュニケーションを量・質、共に深め、問題解決能力、 仲間との協調する心、団結力が養われ、チームビルディングの大切さを学ぶことができます(いっぽ一歩堂HPより)。一般的にお遍路研修は「人間力を高める研修」と銘打たれていますが、お遍路には実際どのような効果があるのでしょうか。
2015年、四国のお遍路を実際に科学研究している産業技術総合研究所四国センターによって「お遍路には精神を安定させる、うつ症状の改善効果があり、血中の悪玉コレステロールが減少したりと、健康増進効果がある」ということが科学的に立証されました。また、現地の人たちが応援してくれたり、無料で宿や休憩所を提供されたりすること、自分と向き合う時間を多く取ることから、人間にとって大切な心が呼び覚まされ、社員の人間力向上へと繋がるのかもしれません。
漫才研修
相手の心をつかむエッセンスを学ぶことができる
「漫才で研修?!」と驚かれる方も多いでしょう。漫才研修とは、実際に芸人たちを指導しているプロの構成作家から、直接漫才について、笑いのつくり方について指導を受けられる研修です。漫才を学ぶことで、トーク力、度胸、発想力などを鍛え、ビジネスに活かそうという非常にユニークな研修です。
「ほんとうに効果があるのか?」と疑問をもってしまいますが、漫才には、真面目でお堅い雰囲気になってしまいがちなビジネスの現場において、コミュニケーションを円滑に進める技術がたくさん詰まっています。例えば、論理的に話を組み立てなければ、相手を笑いに誘うことはできませんし、「そうきたか!」と思ってもらえるにはアイデア力が必要です。
なぜ人は笑うのかに関しては、世界中で研究がなされています。例えば、コンピュータ科学・認知科学者のマシュー・ハーレ氏によると「人は常に周りの情報をもとに状況を判断しており、その推理が外れたとき笑いを得る」そうです。これが正しいかどうかはわかりませんが、笑いが場を和らげ、人と人とを繋ぐ力があることは自明の理でしょう。仕事に必要不可欠な“人を喜ばせるコミュニケーション”を身につけさせるには、案外漫才研修がマッチするのかもしれません。
まとめ
どれだけ社員研修にお金と時間をかけても、参加した社員がストレスをためるだけで終わったのでは、その研修は水の泡。楽しく主体的に参加できる研修のほうが、社員・企業どちらにとっても有益といえるでしょう。
今回はユニークな研修とその科学的根拠をご紹介しましたが、おもしろいだけではなく、実際に効果があることもお分かりいただけたのではないでしょうか。新入社員研修の目的が、これらの研修の内容と合致するのであればぜひ導入してみてください。きっと一生涯忘れることのない研修を新入社員の方に体験いただけると思います。
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