社員の幸福度をあげる「パーパス経営」を社員教育に活かすための3つの方法

今、世界中で「パーパス」の重要性が着目されているのをご存知でしょうか。
「パーパス」とは「存在意義」のこと。何のために会社や自分自身がそこにいるのかという意義を見出すための概念です。

今回は、「パーパス」を人事や経営に導入した「パーパス経営」を、具体的に社員教育に生かしたいという方のための記事です。
ぜひ、「自分の会社に当てはめるとしたら何ができるだろう?」と楽しく想像しながら読んでみてください。

「パーパス経営」とは

『世界中の名だたる企業が実践!社員の幸福度をあげる「パーパス経営」とは』でもご紹介したように、「パーパス」とは組織や、自身の「存在意義」のことを指します。
つまり、「この組織は何のために存在しているか?」「なぜ、わたしは働くのだろう」と根本部分を問い直し、個々人が存在の意義を見いだすことです。
そして、「パーパス」を取り入れた働き方、経営のことを「パーパス経営(Purpose Management)」と呼びます。

パーパス経営を行うことのメリットや、企業の事例などは以下の記事でご紹介していますので、ぜひご覧ください。

なぜ「パーパス」が注目されているのか

私たちは、医療技術の発展により、「100歳まで生きるのが当たり前になる」ような時代に突入していると言われています。
厚生労働省の調査では、1998年には1万人だった100歳以上の高齢者が、2017年には、過去最多の7万人だったそうです。
目覚ましいスピードで多くの人の「生きる時間」が増えているといえます。

「生きる時間が増える」ということは、これまでのように「教育を受け、就職して、引退して、余暇を過ごす」という、ごく一般的な人生のプランは過去のものとなりつつある、と言い換えることもできます。
大幅に生きる時間が増えたことで、子どもを育てること、働くこと、学ぶことなど、あらゆる分野において多様性が生まれることは想像に難くありません。

誰もが、「自分なりの人生の生き方」を当たり前のように求める時代だからこそ、自分は何のためにこれをやっているのだろうと自問する必要性が生まれたのだと考えられます。

パーパス時代における「働き方」

パーパスが重視される時代においては、転職のハードルが下がり、「自身の成長のために今年一年間だけこの会社で働こう!」とか、「基本はこっちで働くけど、週末は気分を変えて違う場所で働きたい!」というケースも出てくるでしょう。
そこで、定着率を上げようと労働時間を短くしたり、給与を上げたりしても従業員の心には響きませんよね。

多様性が増す時代に合った指標は「満足度」よりも「幸福度」であり、そこには「こうすれば従業員は幸せを感じるだろう」という正解が存在しないため、一人ひとりの事情に応じた対応も求められます。

「パーパス経営」を活かす3つの法

個人から始められること

「パーパスの重要性はわかった。でもうちの上司や社長を納得させるのは難しいよ」とおっしゃる方もいるかと思います。
たしかに、パーパス経営をしましょう! 従業員の幸福度を上げましょう! と無理に周囲を変えようとするのは、パーパス経営の目指すところとは真逆の行動であり、本末転倒になってしまいます。
そこで、パーパスに根ざした働き方を広げるために、いつでも、どこでも、簡単に始められることが一つあります。それは、「まずは自分がパーパスをもつ」ということです。
例えば、以下のような質問をご自身に投げかけてみてください。

「わたしの人生で一番大切にしたいことはなんだろう」
「普段の考え方や、言動、行動は、それに結びついているだろうか」
「わたしの存在によって周りの人たちや社会がポジティブな影響を受けるとしたらそれはどのようなことだろう」

また、パーパスとは、単なる「目的」ではなく、「存在意義」です。
もし、一言でパーパスと言えるであろうものが見つかったときは、以下の2つの条件に当てはめてみてください。

1)自分が大切にしたいことである
2)社会にとって良い影響がある

1だけに偏れば、それは独り善がりのものになってしまい、パーパス経営が目指すところの「相乗効果」に反してしまいますし、2だけに偏れば、仕事が「自分ごと」として機能せず、あなたが疲弊してしまいます。
ぜひ、あなたにとってぴったりのパーパスを見つけてみてください。

チームから始められること

中国の故事に、「隗より始めよ」という言葉があります。
これは、大きなこと為すには、まず身近なことから始めるのが良い、という意味です。

「なんのために、この会社は存在しているのだろう」
「会社のパーパスは、自分のパーパスとどう結びつくだろう」
「それは、世の中にどんないいことがあるだろう」

たとえ少人数だとしても、働く意義についてプロジェクトメンバーやチーム内で話し合う時間を取り、改めて自分たちの仕事を見つめ直すことは、社員のそれぞれが意義をもって幸福に働くことに直結します。

また、「パーパス・マネジメント――社員の幸せを大切にする経営(クロスメディア・パブリッシング)」にて紹介されていた、「強み当てゲーム」がとても参考になると思いますので、ここに引用させていただきます。自分らしさを共有し、関係性を高める機会として、ぜひ取り入れてみてください。

① メンバーがそれぞれ、このワークショップの前に自分の強みの診断を行っておく。人数は6名までが目安。診断結果は、メンバーには公表せずに、ファシリテーターだけに伝えておく。強み診断のツールは「ストレングスファインダー®︎」「エニアグラム」「MBTI」などがおすすめ。

② ワークショップ当日、メンバーで集まり、ゲームスタート。「この強みはメンバーの中の誰の強みか」を当てるのが最終目標。

③ ファシリテーターは、1名分ずつ、名前は伏せた状態で強みを紙に書いて、みんなに見えるように貼り出す。

④ その上で、次のような問いを投げかける。
「この強みをもっている人はどんな人っぽい?」
「どんなことが得意そうだろう?」
「有名人や歴史上の人物に例えると?」など。
メンバーは、その強みが誰のものかは一旦気にせずに、この強みの持ち主はどんな人だろう? と想像を膨らまし、問いに答える。
ファシリテーターは、対話の内容をホワイトボードや模造紙に記録する。
ちなみに、メンバーは全員、自分の強みがどれか自覚しているはずなので、問いに答えづらいが、黙っていると他のメンバーにバレてしまうので、なるべく平然と、他のメンバーと同じ表に振る舞うこと(客観的に自分のことを観る機会にもなる)。

⑤ この要領で、全員分行う。

⑥ 最後までいったら、各自が紙に、どの強みが誰のものかを予想、記入し、発表する。
(例:Aさん=佐藤さん、Bさん=田中さん、Cさん=…)

⑦ 全員が予想を発表したら、いよいよ正解をオープン! ファシリテーターが、それぞれの強みが誰のものかを発表する。一番正解が多かったメンバーの勝利。

【ポイント】
・強みと人を切り離して考えるため、「あの人はこういう人だよね」という固定観念から離れて、その人の特性を捉えることができる。
・いつも仕事を一緒に行っているメンバーであっても、このワークショップをやってみると、互いの意外な一面が見使えることが多い。「だからいつもあのような行動をとるんだ」ということが理解できるし、「こういう場面ではこの人に助けてもらおう」と相互サポートの関係もできやすい。もちろん、新しくチームが組成したときにも有効
・客観的に他の人の強みと自身の強みを比べることで、自分に対する理解も深まる。
・ワークショップで互いの強みを理解した後、「どのようにすれば強みをより仕事で活かせるか」「互いにどんなサポートが必要か」といった会話をチームで行えると良い。

外部に向けて発信すること

パーパス経営を行う上でもっとも大切なのは、「一人ひとりが仕事に意義をもって幸せに働けるようにすること」。
また、その効果やエネルギーを波及させ、社会を今までよりも良くするすることが、パーパス経営を取り入れるそもそもの目的です。

コンサルタントであり、『Whyから始めよ!』で有名なサイモン・シネック氏は、これからの企業の在り方について、以下のように提唱しました。

現代はこれまで以上に、社内外で共感を生むことが求められており、経営者をはじめ、企業の人間は自分たちのWhy(存在意義)を語るべきである。

ヒト・モノ・カネ・データ・チエの動きがより流動的になった二〇一世紀では、外部と内部のリソースを組み合わせて新しい価値を生み出すことが大切であるといえます。
そういった時代に、人を惹きつけ、想いを実現する助けとなるのが「自分たちの存在意義」、すなわちパーパスというわけです。

企業の存在意義の再構築を起点にしたイノベーションプロジェクトを行うBIOTOPE代表の佐宗邦威氏は、生きた存在意義を世の中に発信するためには、以下のようなアクションが必要であるといいます。

・バイブル化…会社の想いを可視化、言語化し、まとめること
・ルール化…社外の人たちと共有できるよう、それを定款化すること
・シンボル化…想いを記号(コーポレートアイデンティティなど)にすること

自分たちの生きた存在意義を見出し、それを組織の内外で共有することで、従業員だけでなく、ステークホルダーの心を動かし、組織の創造力を高めることに繋がるのでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
日々の業務が忙しいと、なぜ自分がここで働いているのか? この会社が目指しているのは何か? ということを見失ってしまいますよね。
ぜひ、この記事でご紹介したゲームやワークを、ご自身や会社にぴったりの生きたパーパスを見つけるヒントにしてくだされば幸いです。
本記事をきっかけに、意義をもって楽しく仕事ができる会社が増えることを願っています。

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