相手に協力的になってもらい、互いが相乗効果を生み出し、物事を達成するための考え方を「Win-Win」といいます。
「Win-Win」の関係について、世界的な名著『7つの習慣』の著者であるスティーブン・R・コヴィー博士は、このように述べています。
実際に「Win-Win」の関係を築こうとするとき、有効な手だてがあります。それは、お互いが求める結果、望む結果を明らかにして、その共通の目標に対し、お互いの立場で協力し合うということです。(出典:Franklin Planner)
そして、その具体的な合意書を「Win-Winの実行協定」と呼び、誰もがそれをビジネスや家族関係に役立てることができるといいます。
本記事では、「Win-Win」とは何かを学び、実際に実践するための手法である「Win-Winの実行協定」をご紹介したいと思います。
スティーブン・R・コヴィー
米国の経営コンサルタント。全世界で3000万部以上の売上げを記録した『7つの習慣』の著者として知られる人物であり、同書は「もっとも影響を与えたマネジメント部門の書籍 トップ10」(フォーブス誌)にも選ばれた。ブリガムヤング大学で学長補佐、経営管理・組織行動学教授など務めた後、フランクリン・コヴィー社を共同創設。79歳没。
目次
「Win-Win」の関係とは
「Win-Win」とは、すべての関係において常に相互の利益を求める考え方です。
『7つの習慣』では、「Win-Winの精神の根底にあるのは、人生を競争ではなく、協力する舞台としてみるパラダイムである」と表現されています。
また、双方が納得できる相乗効果的な解決策が見つからなかったときは、「取引をしない」という選択肢を選ぶ(=「Win-WinまたはNo Deal」)柔軟性、つまり、合意しないことに合意する勇気が必要であるとも指摘しています。
例えば、価値観や目標が正反対であるということが明白であるときは、「あなたを従業員として採用しない」、あるいは「今回のプロジェクトには一緒に取り組まないでおこう」という具合です。
次の章で紹介する「Win-Winの実行協定」について、コヴィー博士はこのように表現しています。
Win-Winの実行協定を確立することは、マネジメントの中枢的な活動である。実行協定がきちんとできていれば、従業員はその枠内で自らを管理することができる。するとマネージャーは、カーレースのペース・カーのような役割を果たすだけでよいことになる。物事を始めさせておいて、あとは邪魔にならないようにする。その上で、レースの妨げになっている路面のオイルを掃除するだけだ。(出典:『7つの習慣』)
「Win-Win」の実行協定
コヴィー博士は、大学で教鞭を執っていたころから、「もっとも優れた成果のあるクラスは、最初から目標を明確にしていた」と述べ、実行協定をつくることを重要視しています。
また、マネジメントの神様と呼ばれる経営学者であるピーター・ドラッカー氏も、「マネジメントの手紙」と呼ばれるものを使うことによって、経営者と従業員の間の実行協定を明確にするように勧めています。
それは、「期待像」「ガイドライン」「使える資源」について徹底的に話し合い、このそれぞれの要素が組織全体の目標と整合されていることを確認した上で、従業員からマネージャーに対して話し合いの中身をまとめて、次の計画あるいは評価をいつ行うかを明記する手紙だったそうです。
ここでは、『7つの習慣』で説明されている実行協定の項目をご紹介いたしましょう。(出典:7つの習慣)
望む結果
ガイドライン
使える資源
責任に対する報告
履行不履行の結果
社会にとっての「Win-Win」を考える
Win-Winについて、コヴィー博士はこのように述べています。
あらゆる相互依存的関係において、Win-Winを考えることは、長期的な効果性を得るために欠かせないことである。これは「誰もが満足できるだけの量がある」という豊かさマインドの考え方と密接に関係している。この考え方によって、相手の勝利を自分のものと同じくらい切実に望む気持ちや、関係者全員の利益を模索しようとする姿勢が育まれる。(出典:『7つの習慣』)
「Win-Win」は経済、経営においてよく使用される言葉ですが、近年では「Total-Win(全体利益)」という考え方も注目されています。
実際、ビジネスの現場においても、「企業」と「顧客」という二者間の取引だけではなく、卸売業者や小売店など、様々な関係者が協業し合うことによって全体が成り立っています。
お店と顧客の二者間で「Win-Win」な関係を築けたとしても、お店と卸売業者の間で良い関係を築けていなければ、いずれ全体のバランスは破綻してしまいます。
つまり、あらゆる部分について関係を良好なものにしていくための考え方が「Total-Win(全体利益)」というわけです。
近年注目される「CSV(共通価値の創造)」といった概念にも通づる部分がありますが、日本でも古くから「三方良し」という考え方が大切にされてきました。
広く言えば、社会から求められる組織や会社であるためには、社会・地域に貢献すること、環境を保護すること、持続可能な発展のあり方を考えることなど、誰もが持続的に豊かになるための視点が大切であるといえるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
人に協力を募る際は、ぜひWin-Winの実行協定をつくることを実践してみてください。
また、本記事の引用元である「7つの習慣」は全560ページにわたる大作でもあります。
「読みたいとは思っているけどなかなか読めない」という方は、漫画版も販売されていますので、一度手に取ってみてはいかがでしょうか。
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本記事、本サイトが、優秀な人材を育成することについてお悩みの方の一助になれば幸いです。
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